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競業避止のリスク

終身雇用制の崩壊、雇用の流動化に伴い、今日では同業他社への転職は、すでに当たり前のようになりつつあります。

労働者は就労を通して能力やキャリア、人脈などを作り、より有利な職業生活を営もうとする一方で、使用者は、企業秘密、情報や顧客の保持のために転職に一定の規制を設ける必要がでてきます。

そこで使用者は、労働者が同業他社への就職を禁止するため、様々な措置を講じてきましたが、現実的にはここでのトラブルは少なくありません。

やみくもに、労働者を拘束しようとしても、労働関係終了後については職業選択の自由があるので、労働関係継続中のように一般的な競業避止義務を認めることはできず、就業規則又は明示の特約といった特別の法的根拠が必要となると考えられます。

現実的には、競業避止義務が課されるのは、取締役や支配人などの幹部社員だけです。

しかし、平成2年、平成6年、不正競争防止法が改正され、労働者が使用者から取得または開示された営業秘密についても、労働関係の存続中および終了後を通じ、その不正な使用・開示について差止請求や損害賠償請求による保護が認められるようになりました。

不正競争防止法によって禁止されるのは、不正取得行為により取得した営業秘密を使用したり開示したりする行為と、不正の競業その他の不正の利益を得る目的、またはその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用したり開示したりする行為です。

会社が取り得る事前の措置としては、労働契約もしくは個別的な特約(誓約書など)、あるいは就業規則に、退職後も会社の営業秘密を使用・開示してはならない旨の禁止・義務規定と違反した場合の措置規定(使用者の差止請求や損害賠償請求)を設けておく方法が考えられます。


競業避止の判例


日本水理事件 大阪地裁 平成17年4月15日

退職者が別会社を設立し代表取締役となった。

退職者は「万一退職することがあった場合、競業になるような仕事はしない・・・これによりこうむった被害額の倍額を違約金として支払う」という誓約書を入社時に提出していた。

その後、在職中に関わったマンションの工事を受注した。元の会社は、退職者に合意義務違反として損害賠償2100万円を求めた。

裁判所は、競業禁止規定が、地理的範囲や禁止期間の制限がないことから、公序良俗に反し無効と判断した。


ペットサロンムー事件 東京高裁 平成17年2月24日

ペットサロンの経営者が、店舗付近にて退職後ペットサロンを営業している元従業員らに対し、営業秘密である顧客名簿及び情報カードに記載された各顧客情報を、営業活動に使用したことは不正競争に当たり、在職中から競業関係に立つ被控訴人ら店舗の開店準備行為を行ったことは、雇用契約上の競業避止義務に違反するなどとして、損害賠償を求めた。

裁判所は、顧客名簿及び情報カードは、いずれも秘密として管理されていたものであるとは認めることができず、不正競争防止法2条4項所定の営業秘密に該当せず、労働時間中、開店準備行為を行っていたと認めるに足りる証拠も全くないとした。


アートネイチャー事件 東京地裁 平成17年2月23日

元従業員らが本件顧客情報及び本件顧客名簿について不正取得後の使用行為等不正競争行為を行い、退職後に同業会社に就職したとして、これが競業避止義務違反を構成するとして、顧客名簿の使用差止等が求められた。

裁判所は、具体的事実の存在が認定できないとして、請求を棄却した。


消防試験協会事件 東京地裁 平成15年10月17日

退職後5年間は競業しない旨の特約について、自由意志に基づいてなされたとみられるような状況はなく、むしろ強要されたと同視できる状況が認められ、法的効果を認めることはできない。

したがって、独立し、競業会社を設立した被告に対する原告の損害賠償請求には理由がないとされた。


東京貨物社事件 東京地裁 平成12年12月18日

イベントの設営等を業とする会社とその従業員との間で結ばれた、退職後3年間の競業をすべての地域において禁止する旨の特約が、退職直前ないし退職届提出後に制定された就業規則中の競業禁止規定に基づき、かつ退職金規程の内容を従業員が知らない状態で作成されたものであること、従業員が受け取った退職金も右規程により算出した額よりも少ないこと、及び、右のように広範な特約によらなければ守れない正当な利益が会社側に存在したとは認められないことなどからみて無効であるとして競業関係に立つ業務の差止めを命じた仮処分決定を取り消した事例。

勤務期間中に得た知識などを退職後にどう活かすかは自由であり、特別な約束なしにこの自由を拘束することはできない、とされた。


ダイオーズサービシーズ事件 東京地裁 平成14年8月30日

本件誓約書に基づく合意は、原告に対する「就業期間中は勿論のこと、事情があって貴社を退職した後にも、貴社の業務に関わる重要な機密事項、特に『顧客の名簿及び取引内容に関わる事項』並びに『製品の製造過程、価格等に関わる事項』については一切他に漏らさないこと。」という秘密保持義務を被告に負担させるものである。

原告は、本件誓約書の定める競業避止義務を被告が負担することに対する代償措置を講じていない。

しかし、前記の事情に照らすと、本件誓約書の定める競業避止義務の負担による被告の職業選択・営業の自由を制限する程度はかなり小さいといえ、代償措置が講じられていないことのみで本件誓約書の定める競業避止義務の合理性が失われるということにはならないというべきである。

会社の顧客を奪った元社員に対し、競業避止義務違反だとして120万円の支払が命じられた。


日本コンベンションサービス(損害賠償)」事件 最高裁 平成12年6月16日、大阪高裁 平成10年5月29日

国際会議等の企画、運営を行っていた取締役支店長・支店次長が、退職後、同種の事業を営む新会社設立に際し、従業員らに移籍を勧誘したことなどは不法行為に当たるとして、この行為に対し損害賠償を請求。

大阪高裁は400万円の損害賠償を認容。最高裁もこの判決を維持した。

なお、前会社は同時に、退職金不支給条項の遡及適用による退職金不支給を求めたが、この部分について高裁は認めなかった。


東京学習協力会事件 東京地裁 平成2年4月17日

進学塾の講師2名が、年度途中に講師12名に対し、自ら開設した進学塾に参加するよう勧誘し、うち5名を退職させるとともに、職務上入手したカードに基づき生徒の住所宛に書面を送付して自分の進学塾への入学を勧誘した。

原告の進学塾はこの2名に対し、退職後3年以内に限って競業避止を課していた就業規則の規定に基づき損害賠償を請求した。

裁判所は、至近距離での競業会社設立については、損害賠償が認められるとした。賠償額3,000万円。


企業リスクへの備え

お知らせ

2015年2月23日
本社をJR山手線「大塚」駅前に移転しました。
2014年9月1日
株式会社ビッグキャットの保険業務は、100%子会社である株式会社竹内保険事務所が、事業譲渡により継承しました