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過労死(脳・心臓疾患)のリスク

過労死が発生した場合に予想される会社側のリスクは次の4つです。

  1. 刑事責任・・・労災発生に対する禁固、罰金などの刑罰
  2. 民事責任・・・損害賠償義務
  3. 行政責任・・・業務停止など
  4. 社会的責任・・・マスコミなどへの公表など

過労死という法律的な定義はありませんが、一般的には、職場での過労やストレスが原因で病気になり、死亡に至ってしまうもので、脳や心臓疾患、もう1つは、精神障害およびそれによる自殺(「過労自殺」)です。

精神障害については、メンタルヘルスのページで取り上げていますので、ここでは脳や心臓疾患について解説します。

脳や心臓疾患の原因が業務に起因するものであれば、労災保険(労働者災害補償保険)から、保険給付の支給と労働福祉事業の補償が受けられます。

ただし、労災として認められるということは、業務起因性があるということですから、使用者責任を追及して民事訴訟を訴えられる可能性が高く、その場合の賠償金額は非常に高額になります。

平成11年に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針(平11.9.14基発544,545号)」が出され、さらに最近の最高裁判例等を踏まえて、平成13年に脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準を改正したことで、労災認定の道が大きく開けました。

最近では、過労が原因の脳・心臓疾患に対する労災保険適用件数も増加しており、平成10年度では脳・心臓疾患の労災認定申請521件、認定件数90件だったのが、平成20年度には、脳・心臓疾患に係る労災請求件数は889件、うち支給決定件数は、377件となっています。


脳・心臓疾患が業務起因性が認められた判例


中の島(ホテル料理長)事件 和歌山地裁 平成17年4月12日

ホテルの料理長(発症時58歳)が、会議中に脳動脈破裂によるくも膜下出血で死亡。原告らは、会社の安全配慮義務違反を主張して、逸失利益、慰謝料等約8,492万円を請求。

不規則勤務等であるうえ、献立作成や新しい料理の考案が料理長の職責だとされていた。

料理長は自宅でこれらを行っていたが、発症前の自宅での献立作成にかかる87時間を含めて、1ヶ月の総労働時間は360時間であった。

また、会社は材料費・調理員・売上手当の削減等の方針を強めていた。

裁判所は、会社側の不法行為責任を肯定した。

ホテル内での恒常的時間外労働も45時間を超え、脳血管疾患との関連性が強まるとされる80時間に近いか、これを超えるものだとした。

また、自宅で行った献立作成も料理長としての業務だと認め、ホテル内の労働実態を把握しないまま、新規の料理の発案を指示し、さらに、定例会議において突如調理課職員の売上手当の削減を提案して心労を増大させた。

このため、損害として休業損害553万余円、逸失利益1,873万余円、慰謝料2,400万余円など、合計5,346万余円が認められたが、亡料理長側の寄与要因(糖尿病等の危険因子を抱えていた)を3割と評価して、損害から減額された。結果損害額は2,439万余円となった。


ジェイ・シー・エム(アルバイト過労死)事件 大阪地裁 平成16年8月30日

アルバイト(21歳)が、中古車販売の広告事業に従事していたが、採用後2ヶ月で突然死(虚欠精神疾患と推定)した。

死亡前4週間の労働時間は232時間、時間外は88時間に及び、死亡前1週間の労働時間は90時間30分、時間外労働は50時間30分にも及んでいた。休日もほとんど取得できていなかった。

当人はヘビースモーカーでもあった。交通事故により腎臓摘出を受けてもいた。

裁判所は、肉体的精神的疲労が相当程度蓄積していたと認定し、会社側に総額4,734万余円の支払いを命じた。

喫煙による損害額減は20%とされた。


長崎労基署長(三菱重工業長崎研究所)事件 長崎地裁 平成16年3月2日

三菱重工業長崎研究所の室長であった原告が、休日のテニスの受講中に心筋梗塞を発症した。

裁判所は、
(1)原告が1ヶ月に76時間以上の時間外労働をしていたこと(原告は年間3,000時間超えの労働時間だと主張)

(2)室長としての業務の困難度等を認定し、業務と心筋梗塞との間に因果関係が認められるとし、監督署長の療養補償給付等の不支給処分を取り消した。

なお、本件に対しては、企業側が謝罪し、和解金(1億2,000万円以上)を支払うことになった。


和歌の海運送事件 和歌山地裁 平成16年2月9日

雇用契約に準じるような使用従属性の存在を認定し、過労による脳内出血につき、安全配慮義務違反による損害賠償を認定した (逸失利益・慰謝料の合計6,887万円)。


榎並工務店事件 大阪高裁 平成15年5月29日

ガス管の溶接作業中に脳梗塞で倒れた被災者は、死亡直前の1ヶ月間は時間外労働が約70時間に上り、日勤と夜勤の連続勤務が普段より倍増していたもので、業務と死亡との間には相当因果関係が認められる。

賠償額は、被災者に持病があったことから、損害額の約6割(約4,400万円)が相当である。


システムコンサルタント事件 最高裁 平成12年10月13日 東京高裁 平成11年7月28日
東京地裁 平成10年3月19日

システムエンジニア(33歳)が脳幹部出血により死亡した案件。

会社は、高血圧の症状が相当程度増悪していることを認識しつつも、特段の負担軽減措置をとらなかった。

遺族は、死亡原因が長時間の過重労働が原因であるとして、損害賠償9,000万円を請求した。

この裁判の過程で、死亡した従業員の死亡前1年間の労働時間は、所定労働時間1,952時間に対し、所定外1,004時間であることが判明(しかも30分未満の端数・休憩を除く)。

さらに、死亡前3ヶ月の労働時間は、所定労働時間が488時間であるのに対して、所定外労働時間が340時間30分、合計で828時間30分であり、急激に所定外労働時間が増加していた。

一審の判断
会社は、もともと高血圧症のある従業員の業務を軽減する措置をとらなかったばかりか、過重な業務を行わせた。損害賠償責任を負う。

ただし、当事者は入社直後から既に境界域高血圧であり、損害額の50%を減ずるのが相当である。

二審の判断
一審を指示。過失相殺も一審同様に判断。

少なくとも、使用者は、高血圧が要治療状態に至っていることが明かな労働者については、高血圧に基づく脳出血などの致命的な合併症が発生する蓋然性が高いことを考慮し、健康な労働者よりも就労内容及び時間が過重であり、かつ、高血圧を増悪させ、脳出血等の致命的な合併症を発症させる可能性のあるような精神的及び肉体的負担を伴う業務に就かせてはならない義務を負う」と判断した。

そのうえで業務と脳出血発症とは相当因果関係があり、被災者の高血圧症を認識しながら業務軽減措置等をとらなかった会社には、安全配慮義務違反があったとして、損害賠償(3,237万円)を認容。

なお、自らの健康保持について本人の配慮が欠いたとして、50%の過失相殺が認められた。最高裁は会社側の上告を棄却。


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2014年9月1日
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