1. 企業と経営者の保険
  2. 企業リスクへの備え
  3. 不法行為

不法行為のリスク

会社は、自社の労働者が第三者に迷惑をかけた場合、次の2種類の責任を負います。

使用者の責任 責任の概要
不法行為責任 使用者は、故意または過失により他人(労働者も該当)の権利を侵害したときは、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。
また、事業のために人を使用する者は、被用者が事業の執行に当たり第三者に与えた損害を賠償する責任を負います(民法715条)。
債務不履行責任
(安全配慮義務違反)
使用者には、雇用契約上、労働者の生命・身体が害されないようにすべき安全配慮義務があり、その義務違反がある場合、債務不履行として民事損害賠償責任を負います。

具体的には、セクハラやパワハラ、いじめ、男女差別などで労働者から不法行為責任を追及されることになります。

特に、セクハラでの損害賠償請求では、かなり高額の賠償責任が判決が出ているのはご存知の通りです。

男女差別では、募集・採用時の男女差別や、妊娠や出産を理由とした配置転換等の差別、教育訓練・福利厚生での男女差別、退職、定年や解雇に関する差別などが挙げられます。


不法行為が認められた判例


住友金属工業(男女差別)事件 大阪地裁 平成17年3月28日

会社は、昭和37年から50年にかけて採用された高卒従業員について、男性は本社一括採用・長期実習・本社及び各事業所配属・判断や交渉を伴う基幹的業務に従事させてきた。

これに対し、女性は、本社及び各事業所で採用し、定型的補助的業務を担当させてきた。また、女性は短期間で退職することを前提とし、結婚退職金の割増など、これを奨励する措置をとっていた。

さらに、高卒男性事務職は、ほぼ全員が上位の職に昇進しており、また、そのような評価が下される範囲の勤務評定となっており、高卒女性は、優秀者であっても、低位の職にとどまるような評定がなされていた。

こうしたことから、昇格及び昇給に差が発生し、賃金に歴然とした違いが生じた。

原告4名は、これを性別による差別的取扱いだとして、得べかりし賃金との差額相当の損害賠償等(4名計3億2,500万円)を請求した。

判決

当時の時代背景を前提とすると男女別の募集・採用は、直ちに公序良俗違反とはいえず、採用後の異なった取扱いについても当然に公序良俗違反ではない(均等法によりこれを直接禁止したのは平成11年4月以降)。

しかし、同等な能力を有する者について、明らかに差別的な評価を下し、これに基づいてコース別の取扱いをすることは民法90条の公序に反する差別的取扱となり、会社は不法行為責任(民法709条、44条、715条)を負う。

本社採用と事業所採用による差であるという会社側主張も認めがたい。

ただし、原告らが主張する標準的な男性事務職との差額全額まで支払うことが相当とは認められない。

こうした判断から、事務技術職へ転換した男性技術職との差額賃金相当額の支払い(1,415万円、1,413万円余、1,125万円、887万円余)と、さらなる上位職種への登用の道を閉ざしたことに対する慰謝料(300万円、250万円、200万円、150万円)を認めた。


住友生命(既婚女性賃金差別)事件 大阪地裁 平成13年6月27日

既婚女性社員12人が、結婚していることを理由に、未婚女性社員に比べて、考課査定、昇格、格付けにおいて差別をされたのは違法であると主張し、差額賃金等の支払いを求めた。

判決

被既婚者であることを理由に、一律に低査定を行うことは、人事権の範囲を逸脱するものであり、合理的な理由に基づかず、社会通念上容認し得ないものであるから、人事権の濫用に当たり、人事考課、査定を受けた個々の労働者に対する不法行為に該当する。

過去3年間の差額賃金及び慰謝料(合計約9,000万円)の支払いを命じた。


I銀行事件 東京地裁 平成.11.10.27

支店長は日本語を教えてほしいとの口実で従業員Aを自宅に誘い、断り切れずに訪問したAを強姦した。

支店長は、従業員Bを支店長室に呼び出した上、Bの頬にキスをし、スカートをめくり上げて腹部をなで回し、ブラジャーの中に手を入れて乳房をつかむ等のわいせつ行為をした。

原告らは、支店長に対し不法行為責任、銀行に対し債務不履行責任又は使用者責任に基づく損害賠償を請求。

Aの請求額:600万円(慰謝料500万円、弁護士費用100万円)
Bの請求額:248万円(慰謝料200万円、弁護士費用48万円)

判決

支店長の各不法行為を認定。銀行側の使用者責任を認定。

Aの認容額 330万円(慰謝料300万円、弁護士費用30万円)
Bの認容額 77万円(慰謝料70万円、弁護士費用7万円)

支店長のAに対する強姦行為は、勤務時間外に支店長の自宅において行われたものであるが、日本における代表者という支店長の地位に照らせば、被告が従業員に日本語を教えるよう求める行為は、銀行事業の執行行為と密接な関連を有する行為と認められる。

支店長のBに対するわいせつ行為は、勤務時間中に支店長室において行われたもので、銀行事業の執行行為と密接な関連有する。


全国解体工事業団体連合会事件 東京地裁 平成15年9月30日

女性事務職員に対する事務局次長の強姦等。

判決

不当行為に当たるので、連合会は事務局次長と連帯して賠償する義務があるとし、賠償額862万円が示された。


ケンコーマヨネーズ事件 東京地裁 平成15年6月16日

マンション管理会社の社長からセクハラ、暴行を受け、性的な嫌がらせなどでPTSDと診断され、治療継続中。

判決

被告Aによる、原告の入社以来の性的嫌がらせは、長期間にわたり執拗に行われたものであること、強姦未遂は被告会社事務所内で行われたもので、原告に不法行為を誘引するような落ち度といえるものがないこと、原告はこの不法行為により、心的外傷後ストレス障害となり、不法行為後3年を経過した時点でもなお治療を継続中であると認められ、原告の被った精神的被害は大きいと認定され、慰謝料等約300万円の支払いが命じられた。


東北大助教授性的強要事件 仙台高裁 平成12年7月7日 仙台地裁 平成11年5月24日

院生の病気等につけこみ、指導教官だった助教授が性的関係と恋人との別離を強要。研究室内で抱きつかれたり、優位な地位を利用してホテルに連れ出され、性的関係を強要されたとの訴え。

一定期間性的関係が継続したが、院生が強く関係を拒否すると、締切り直前の論文の書き直しを命じる。

学内調査の際に偽造証拠を提出し、事実ねつ造を画策した。

仙台地裁判決

慰謝料750万円が認容。

被告の不法行為は、長期に及び多様である上、教育に携わる者としてあるまじき振る舞いであり、特に原告が不安神経症に苦しんでいることに乗じて、妻子ある身でありながら、自己の身勝手な欲望を満足しようと図り、原告に性的接触を受忍させ、ついには肉体関係まで結ばせたことは、悪質という外なく、このような被告の行為によって原告が将来にわたって拭い難い精神的苦痛を受けたことは、原告本人尋問の結果からも明らかである。また、関係を拒絶されるや、論文の書き直しを命じて報復した上、研究科の調査に対しても、当初偽造の診断書を提出したり、他大学の教官に偽証まで依頼して自己の責任を免れようと図るなど、事後の態度も卑劣かつ狡猾と言わざるを得ない。

仙台高裁判決

慰謝料750万円に、弁護士費用150万円をプラス。確定。


仙台セクシャルハラスメント(ピアノ教師)事件 仙台地裁 平成11年7月29日

原告は10歳の頃から被告にピアノの個人レッスンを受け、また、原告が大学在学中は、その講師としてもピアノの指導を受けてきた。

ところが、被告教師は、原告が中学3年の時にキスをしたことをはじめとして、高校入学後は下着の中に手を入れる、性器をもてあそぶなどのわいせつ行為に及び、大学入学後には、ついに性交渉を持たせた。

その後も原告は、大学を卒業するまで、複数回同様の関係を持たされた。

これにより、原告は甚大な精神的損害を被るとともに、現在外傷後ストレス障害及び解離性障害を発症しており、ピアニストになる道も、事実上閉ざされたと感じている。

請求額 1,100万円(慰謝料 1,000万円、弁護士費用 100万円)

判決

原告勝訴 900万円(慰謝料800万円、弁護士費用100万円)を認容。

被告の反論(1):原告主張の性的行為は合意の上のことである。

原告が被告に抱いていた尊敬及び畏怖の念から常に被告が原告に指導ないし指示をし、原告はこれに従わざるを得ないとの関係にあったもので、原告が明示的な拒絶の姿勢を示さなかったからといって原告の同意があったということはできない等として、排斥。

被告の反論(2):仮に不法行為が成立するとしても、本訴提起の時から3年以前の部分については消滅時効が成立している。

原告の不眠、摂食障害、めまいといった症状や行動が、被告の行為を原因として形成されてきたことを原告が明確に受け止めたのは、医師の診察を受け始めた時であるとして、排斥。

その後、法定外で和解成立(平成11.8.9 800万円の支払と、控訴しないという条件)


大阪府知事セクシャルハラスメント事件  大阪地裁 平成11年12月13日

知事は、
(1)選挙運動用自動車の中で、原告の下腹部、太腿、胸及び下着に手を入れ陰部を触り、

(2)原告が知事を強制わいせつ罪で告発したことを虚偽申告罪に該当するとして逆告訴し、記者会見などで原告の行為は選挙妨害であると述べ

(3)第1回口頭弁論後の記者会見で、原告の主張が「真っ赤な嘘」であり、「悪質な選挙妨害」であるなどと述べ、さらに大阪府議会の本会議及び各種委員会においても同様の趣旨のことを述べた。

請求額 1,000万円

(わいせつ行為並びに虚偽告訴罪で虚偽告訴されたこと及び記者会見で原告の行為が選挙妨害であると述べたことによる名誉毀損に対する慰謝料200万円、弁護士費用300万円)(記者会見等での名誉毀損行為に対する慰謝料)

判決

原告勝訴 1,100万円を認容

(わいせつ行為の慰謝料200万円、虚偽申告による名誉毀損の慰謝料500万円、第1回口頭弁論後の記者会見等における名誉毀損の慰謝料300万円、弁護士費用100万円)

知事のわいせつ行為は、執拗かつ悪質で、計画性もうかがわれ、行為後も反省せず、海外ブランド品の交付により解決しようとするなど、原告の人格を蔑視しており、強く非難されるべきである。

*虚偽申告罪等による名誉毀損について

自らわいせつ行為をしながら、原告を虚偽告訴罪で告訴して罪に陥れようとしたことはきわめて特異かつ異例な違法性の強い行為であり、しかも意図的に虚偽内容の記者会見をして全国に報道させ、原告を大衆の好奇の目にさらしたことはきわめて異常で、原告が受けた精神的苦痛は大きい。

*第1回口頭弁論後の記者会見等における名誉毀損について

請求原因について沈黙しながら、同日行われた記者会見では態度を一変させ、原告の主張を「真っ赤な嘘」「明らかな選挙妨害」「でっちあげ」等と発言し、原告に反論の機会がない記者会見の場等で、一方的に原告を誹謗した行為は、著しく社会常識を逸脱し、民事訴訟による紛争解決を求めた原告の態度を翻弄している。知事は原告を侮辱・非難する発言を繰り返し、その発言は連日、全国に報道された。

また、同事件に関する強制わいせつ事件については、大阪地裁(平成12年8月10日)において、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決が下された。被告、検察側とも控訴せず、確定。


U福祉会事件 名古屋地裁 平成17年4月27日

福祉施設の看護師。職員らから、50人の入所者等の医療データを1週間で整理するように言われたが、無理だと口論になった。

その後、原告は、職場の組合を脱退し、地域のユニオンに加入。うつ病罹患のため約1か月休職した。

職員会議で、職場の綱領を否定するという批判を浴びた。

「残念なことに綱領は認められないという職員がでました。○○看護婦です。」「経営を外から崩す。」「個人の思いだけでやったり、やらなかったりする看護業務ならやっていただきたくない」「隣の療護施設に自分の子供が入所しているのに・・・いつも自分が中心・・・親の立場、職員の立場、看護婦の立場を使い分け、逆に利用して混乱させてきた」「仲間に対する援助の姿勢に疑問を感じる」「自分中心の○○に仲間のためという言い方はしてほしくない」「スパイのような感じがする」などの発言があった。

不眠、情緒不安定等の症状(自分に向かってトラックが突進してきたり、狭いビルの谷間を後ろからせかされて飛び降りるなどの悪夢を見た。職場に怖ろしくて近寄れなくなった)を訴え、主治医から「職員会議のつるし上げによる不安定症状」という所見を得た。

また、労基署に労災保険に基づく療養補償を求め、これについては認められた。

組織ぐるみのいじめだとして、法人の使用者責任と、施設長・副所長、労組役員の連帯責任が問われた。

慰謝料として1000万円を請求。

判決

被告らの行為は、労組を脱退しユニオンに加入した原告を非難・糾弾したばかりか、職員会議の参加者に、同様の発言をするよう、誘導・扇動したものである。

また、法人も、被告らの不法行為について、使用者責任を負う。

原告は、ストレス耐性の弱さ(会議以前にうつ病に罹患している)はあるが、この会議により、精神的疾患(うつ病とは別)に罹患した。

原告の現在の症状に照らせば、職場への復帰は困難。他職場への復職も直ちに可能とは断言できない。

慰謝料500万円。休業補償給付額を除いた賃金・手当の未払額、827万円の請求が認められた。


トナミ運輸事件 富山地裁 平成17年2月23日

原告は昭和45年に入社し、現在も在籍。昭和48年、大手運送会社により最高運賃を一律とし顧客を争奪することを禁止するヤミカルテルが結ばれた。これは独占禁止法に違反する可能性が高いものであった。このことを原告は、読売新聞に告発。さらに、公正取引委員会、関連の労働組合、運輸省、日本消費者連盟、国会議員に告発した。

日本消費者連盟の調査により、この訴えの事実が判明し、運輸省からの厳重警告処分が下された。

原告は、その後研修所へ異動し、6畳程度の個室で1人で勤務し、業務内容も雑用しか与えられなかった。

上司から毎日退職勧奨が行われ、兄も退職を説得するように迫れたり、家に暴力団風の者が訪れ、退職願を書くことを要求することもあった。

こうしたことから、慰謝料等5,400万円の支払と、謝罪文を求めて提訴した。

判決

内部告発には公益性があり、発言力が乏しかった原告が外部の報道機関に告発したことは無理からぬことだった。

会社は人事に裁量権を持っているが、それは合理的な目的の範囲内、法令や公序良俗に反しない限度で行使されるべきものである。このことから雇用契約に付随する義務として、裁量を逸脱した人事権が行使される場合は、会社は債務不履行の責任を負う。

原告に雑務しか行わせず、昇格を停止して賃金格差を発生させたことは、人事権の裁量の範囲を逸脱する違法なものであり、債務不履行による損害賠償責任がある。

以上により、在籍している同期同学歴の者の中で最も昇格の遅い従業員の賃金との差額1,356万7,182円(+延滞損害金)の支払いが命じられた。


松蔭学園事件 東京高裁 平成5年11月12日

高等学校の専任教諭だった原告を、昭和55年4月から学科の授業、クラス担任等の校務分掌の一切から外し、昭和56年4月からはその職員室内の席を他の教職員から一人だけ引き離し、さらに昭和57年3月からは従来事務用品等の物置として使用されていた部屋の一部を衝立とカーテンで仕切り「第三職員室」と表示しただけの場所に、1人だけ隔離し、昭和61年8月からは何らの用務も与えず自宅待機を命じつづけた。

判決

このような一連の行為はそれを正当化できる理由もないので違法であるとした。

また、これら行為は高等学校の校長、副校長によってなされたものであるから、被告学校法人は使用者責任に基づき、不法行為に基づく損害賠償義務を負うとした(一審の東京地裁 平成4年6月11日は損害額として400万円を認容したが、控訴審は600万円を認容した。)。


企業リスクへの備え

お知らせ

2015年2月23日
本社をJR山手線「大塚」駅前に移転しました。
2014年9月1日
株式会社ビッグキャットの保険業務は、100%子会社である株式会社竹内保険事務所が、事業譲渡により継承しました